2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27023
避難においては,リスクを適切に把握し最も安全な経路での避難で迅速に身の安全を確保することが重要である.そこで,本研究では,浸水域脱出を最優先とした脱出避難の有効性の検証を目的とした.中小河川の同時氾濫を対象とし,56種類の降雨に対して氾濫シミュレーションを行い,その結果を用いて,ネットワーク分析による避難経路探索を行い,各浸水パターンにおいて各避難手法を評価した.評価した結果,浸水規模が大きくなる降雨ほど脱出避難の効果が高いこと,市外の避難所の活用が有効である地点がいずれの降雨条件においても存在することを示した.また,脱出避難の効果が高い地点は市全体に幅広く分布し,特に,浸水リスク頻度が高い地点の効果が高いことを示した.今後,地区防災計画での浸水リスクに応じた避難経路の検討が望まれる.