2023 年 79 巻 6 号 論文ID: 22-00277
放射性廃棄物の地層処分の安全評価では,放射性核種の岩石への収着による移行遅延を定量的に評価することが重要であり,トレーサー試験は評価方法の1つと考えられる.原位置トレーサー試験では,岩石の収着特性を直接評価できる利点がある一方で,割れ目内の流動場等の試験条件を完全に制御することは難しく,評価される収着特性への試験条件の依存性や妥当性に関する検討は十分でない.このため,本研究では,送液流量を変えた室内トレーサー試験を実施し,評価される収着特性の依存性と妥当性を評価した.その結果,岩石マトリクスの遅延係数は送液流量に関わらず同程度となり,バッチ試験の結果とも整合した.これは,原位置の試験環境が理解/制御できれば,原位置トレーサー試験においても安全評価に資する収着特性を評価できることを示唆する.