2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00142
気候変動に伴う降雨外力の激化を受けて河畔遊水地の整備に注目が集まっている.本研究では,上流からの洪水流量の波形に対し遊水地を最適に設計するための基本方針について理論的検討を行った.まず,洪水波形をピーク流量とピーク時刻を含む式形で与え,河道の水位を求めて越流堤からの流入による遊水地の滞留過程を定式化した.その解に基づき,限られた容量の遊水地を有効に活用するための越流堤の最適な諸元を導くとともに,遊水地容量とピーク流量低減効果の関係を表現した.最後に,気候変動に伴う洪水流量増加に対し,遊水地の治水効果の低下幅や,所定の治水効果を得るために必要となる遊水地容量を試算した.本研究における理論展開は幾つかの仮定に基づくものの,任意の洪水波形に対して最適な遊水地を立案する上での基本的指針を与えている.