2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00156
東日本大震災の津波被災地では,高齢化が進む中で集団移転を実施した.津波に対する安全性は向上したが,生活の拠点だった低地沿岸部から移転したことで,高齢者の徒歩による生活環境は大きく変容したと考えられる.本研究は,職住分離を推進した中で行われた集団移転が,高齢の移転参加者の徒歩による生活環境に与えた影響を,集団移転団地から生活施設・生業施設までの徒歩アクセシビリティより明らかにした.その結果,1)市誘導型は市街地部に多く徒歩圏から徒歩圏外に,協議会型は郊外・集落部に多く徒歩圏外からより徒歩圏外に移転し,2)商業施設や公共交通は郊外・集落部で撤退し内陸部側に,住まいは市内全域で立地が拡大・分散したことで,住まい・一部生活施設・生業施設が離れ,徒歩による生活環境に影響を及ぼし得ることが示唆された.