2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16076
本研究では,高解像度レーダー(XRAIN)を用いた線状降水帯の降水セル追跡手法を開発した.同手法を2015年9月に発生した線状降水帯に適用した.その結果,20分以上の寿命を持つ降水セルは約10分ごとに発生していることがわかった.また約10km程度の間隔で存在し,15から25m/sの速度で移動する特徴が示され,この結果は変分原理を用いた三次元解析とも整合的である.さらにほとんどの降水セルは,検出されてから10分間は降水強度が増加し続けており,降水強度のピークは雨域の北部に集中する特徴を定量化することが可能になった.線状降水帯の抽出から事例選定を経て同手法を適用する解析スキームによって,多くの線状降水帯を対象とした分析が進み,降水セルの時空間特性を統計的に示すことが可能となる.