2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16119
日本の水稲栽培について,作物生育と水資源利用可能性の相互関係を考慮した気候変動影響評価や,トレンドの変化に関する分析はこれまでに行われていない.本研究では,水稲生育モデルと農業用ダムモデルを組み合わせた複合モデルと,RCP8.5シナリオに基づく150年連続実験データを用いて,三重県の土地改良区を対象に水稲生育日数と収量,そしてダム貯水率と水ストレスの経年変化を分析した.その結果,収量の増加傾向は2070年ごろから停滞に転じ,年を経るにつれてダムの渇水時期が早まるとともに水ストレスは増大することが推定された.また,適応策として田植日の変更を考えると,平均収量の最大化という観点では田植日を早めることが望ましく,安定した灌漑補給という観点では田植日を遅らせることが望ましいことが分かった.