2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17036
気候変動に伴い,台風は強大化することが予測されており,それに伴う沿岸域の高潮リスクの増大が懸念されている.本研究では研究事例の多い内湾ではなく外洋に面した熊野川河口域における高潮偏差に着目し,洪水に与える影響を検討した.本論文は3つの内容で構成されている.(1)経路による変化を見るために,伊勢湾台風を東西に平行移動させ,高潮偏差を解析した結果,東に40kmで0.92mと最大となった.(2)将来気候を想定したd4PDF台風トラックから高潮偏差を解析した結果,(1)の結果を上回る1m以上の高潮偏差が確認されたが,いずれも経路によらず接近時かつ中心気圧が低い時に高潮偏差が大きくなる傾向となった.(3)熊野川の洪水生起における河川水位に与える高潮の影響を整理した結果,軽微であることが確認された.