2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17044
気候変動による海面上昇や高潮の将来変化による沿岸域の浸水リスクの増加が懸念されている.我が国では,気候変動適応策の方針が示されつつあるが,長期的な浸水リスク変化は未だ定量化されていない.本研究では,三大湾を対象に,共通社会経済経路SSP毎の人口推移とIPCC AR6の海面上昇量の予測値を用い,潜在的な浸水危険地域の面積と人口の経年変化を簡易推計した.大阪湾を対象に海面上昇を考慮した潮位条件で台風Jebiによる高潮浸水計算を行い,浸水面積と高潮影響人口の将来変化を推定した.その結果,影響人口についてはハザード変化よりも人口推移の影響が大きく,2020年以降の顕著な影響増加は東京湾のSSP5-8.5の高排出シナリオのみにみられた.シナリオ間の影響差は2060年以降に拡大することを明らかにした.