2024 年 80 巻 18 号 論文ID: 24-18116
甚大な被害をもたらすような大規模地震が発生した場合,緊急物資輸送等の観点から利用可能な係留施設を即座に判断する必要がある.近年ではその利用可否判断を迅速に進めるための事前準備としての検討も進められているが,特に地震発災後の初期調査(概ね発災から3日程度以内)において,調査機材類や判断までの時間が極めて限定される中での判断事例や,その判断に際しての港湾分野に関する報告事例は少ない.今後発生が想定される大規模地震では,広域かつ複数港湾にわたっての多数の係留施設に対する同様な判断を迅速に実施する必要があることから,本稿ではその一助となるよう,令和6年能登半島地震(M7.6)の発災後初期段階において,著者らが実施した係留施設の利用可否判断の実例と,その判断プロセスを踏まえて得られた,平時において事前準備すべき事項を検討するものである.