2024 年 80 巻 18 号 論文ID: 24-18137
沿岸における海生生物の生息場の環境を,生物の存続の観点から評価するには,生物の繁殖に着目した評価方法の検討が必要である.本研究では,潜水士による調査が困難な大型甲殻類の繁殖行動に対して,タイムラプスカメラを用いた観察方法を考案し,実海域でその有効性を確認した.東京湾沿岸3箇所の港湾構造物,干潟およびアマモ場に,分類群の同定と繁殖行動の記録を主目的とした2台のカメラを1組として約3日間設置し,大型甲殻類の出現状況および繁殖行動を記録した.タイワンガザミ,ガザミ,コブヨコバサミ等の交尾前ガードが午前0~9時に記録され,タイワンガザミは夜行性であることが示唆された.役割の異なる2台のカメラを用いた本調査方法は実効性と安全性が高く,夜間における大型甲殻類の繁殖行動の観察に有効であると考えられた.