2024 年 80 巻 18 号 論文ID: 24-18160
台風の襲来は海上施工の可否判断に大きな影響を与えるが,台風の持つカオス性から決定論的な予測は困難であるため,初期値に複数摂動メンバーを加えるアンサンブル予報による確率論的な予測が行われている.アンサンブル予報については,メンバーをクラスタリングすることで時間経過による的中率の上昇を目的とした検討が降水強度や高潮の予測ではされているものの,とりわけ施工可否判断を目的とした波浪予測に適用した事例は少ない.よって筆者らは,複数の台風を対象として経路のクラスタリングを行い,クラスター毎に波浪推算の結果を分類して平均することで,進路別の波浪の傾向の把握とシナリオ別の確率予測によって施工可否判断や退避判断に活用するための基礎的検討を行った.その結果,アンサンブル内に内包された進路別のシナリオが判別でき,それに伴い計算される波高も異なることが明らかになった.直近のアンサンブル予報から台風経路をクラスタリングして台風情報と照らし合わせることで,意思決定に資する判断材料としての活用が期待される.