2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20039
自動運転車の開発が進んでおり,プログラムが主体となって運転制御を行う自動運転レベル3以上の技術が登場した.これに伴い,事故発生時の責任所在などの議論が行われている.一方で自動運転車におけるトロッコ問題が注目されている.トロッコ問題は命の選択をテーマとする哲学的な問いである.人は何をもって正しいと判断するのかという正義の価値観の議論はいまだ結論が定まっていない.しかし自動運転車の制御にはプログラムの定義が必要である.では正義の価値観をどのように定義すればプログラムとして実装できるのか,それは自動運転車の社会受容性においてどのような意味を持つのか.本研究ではトロッコ問題を功利主義,義務論,利他主義,二重結果論の四つの類型に整理し,技術,倫理,法律の観点から自動運転車における実現性の検討を行った.