2024 年 80 巻 26 号 論文ID: 24-26014
本研究では,北九州市民を対象として戸建住宅の脱炭素対策に関するシナリオ選択型の市民討議会を実施し,討議中に実施したアンケート調査データと討議中の会話データをもとに,情報提供や討議を通じた参加者のシナリオ選択プロセスを定量的に評価した.その結果,参加者全体において,討議前は,対策設備のコストパフォーマンスを,設備導入補助金による社会的負担の情報を提供した後の討議では,社会的負担を重視してシナリオを選択していた.「温暖化対策積極層」と「温暖化対策消極層」は主にコストパフォーマンスを重視してシナリオを選択していたが,前者は社会的な負担の低減を,後者は費用削減を重視するという違いがみられた.「温暖化懐疑層」「温暖化無関心層」は対策技術の成熟度や信頼性の不安から,討議後には現状維持のシナリオを選択していた.