2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27024
本研究では,質問紙調査に基づくコンジョイント分析により2040年の電力部門のビジョンに対する人々の選好を定量化した.コンジョイント分析の属性は,エネルギー政策の基本方針である安全性,経済性,環境適合性,安定供給性とし,各属性の水準は長期排出目標を想定したシナリオ下での複数の数理モデルの推計結果を参考にした.分析の結果,経済性の低下や安全性の低下,安定供給性の低下に対する選好が有意に低かった.相対重要度は,経済性と安定供給性がそれぞれ約45%,38%と大勢を占めた.環境適合性の多寡は,選好に有意な影響を与えなかった.長期排出目標の下では電力部門のCO₂排出目標(環境適合性指標)が何れの水準でも野心的となるため違いをもたらさず,より実生活で影響を実感できる他の属性が選好に影響した可能性がある.