2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16117
日本全国の1級水系を対象に,河道内樹木の伐採による年期待被害額の軽減率(適応)とCO2削減量(緩和)を定量的に評価した.樹木伐採の緩和効果として,樹木の伐採地点から発電施設までの輸送にかかるCO2排出量を含めたCO2削減量を算出した.樹木伐採による洪水被害額軽減率は,常願寺川で2.1%,黒部川で0.9%である.このことから,急流河川の下流区間の伐採が効率的であることが理解された.伐採区分によるCO2削減量は,上流で564×103t-CO2,中流で621×103t-CO2,下流で618×103t-CO2である.これらから,上流区分における樹木伐採はCO2削減効率が悪いことが理解された.河道内樹木の伐採による適応・緩和ともに効果の高い水系は,十勝川,天塩川,木曽川水系であった.