2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16182
人工衛星画像と河川の観測水位を組み合わせて,高低差の少ない湿地帯内部の標高を推計し,浸水過程を解析した.バングラデシュ北東部のメグナ川流域に広がるハオールと呼ばれる広大な湿地帯を対象とした.複数年の推計標高の比較により,上流から流下する土砂の貯留や土地利用の変化に伴う地形変化を把握した.推計標高を用いて氾濫解析を行うことで,湿地帯を取り囲む潜水堤防の一部を開放して導水した際の浸水範囲の時系列変化を把握した.これより,湿地帯内の経年的な地形変化が浸水の到達時間に及ぼす影響を定量評価することが可能となった.また,堤防内外の水位差を小さくし,堤防の損傷を抑制するための構造物の配置設計に役立てられることを示した.