2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16210
宮城県気仙沼市西舞根川では汽水域再生のため多孔質なフレーム護岸や塩性湿地が設けられているが,実際の生物利用状況は明らかになっていない.そこで本研究ではニホンウナギを対象とした環境DNA調査と水中カメラによる撮影を実施し,フレーム護岸と塩性湿地の利用状況を調べた.
水中カメラの映像によりニホンウナギやチチブなどの魚類がフレーム護岸内の空隙を生息場として利用する様子が観察された.9月の調査期間中に湿地底層において溶存酸素量が0mg/Lの貧酸素状態となり,この期間はニホンウナギの環境DNAが検出されなかったが,貧酸素化前と回復後には検出されていた.このことから湿地底層に生息していたニホンウナギが貧酸素化により河川や湿地表層などに移動し,貧酸素化が解消されると湿地底層に戻ってきたことが示唆された.