2025 年 81 巻 9 号 論文ID: 24-00191
集合知に基づいた学習,予測は公平,中立的で社会にとって望ましいものに見えるが,集合知を利用した意思決定は主体の選択に偏りを生じさせ,集合知を利用しない場合と比べて社会の状態が悪化する可能性がある.本稿では,このような状態を過学習型劣位均衡と定義し,数値計算を通して過学習型劣位均衡が起こり得ることを示すとともに,その発生条件と形成メカニズムを明らかにする.都市の各主体(個人,店舗,情報プラットフォーマー),集合知としてランキングを考慮したエージェントベースモデルを構築し,個人が異質な条件下では,1) 個人,店舗のランキングを利用した優先的選択が過学習型劣位均衡を引き起こすこと,2) 店舗のリスク回避志向が過学習型劣位均衡の形成をさらに強めることを示した.