土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 9 号
通常号(9月公開)
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
地圏工学
報告
  • 有木 高明, 水野 健太
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00272
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     改良土供試体の室内弾性波計測における計測条件が結果へ与える影響について,発・受振子による圧着型計測機を用いた基礎検討,既往の研究との比較を行った.本計測機における影響が最小で必要な固定圧力は20kN/m2であった.この固定圧力下で長さ径比が2.0の供試体の弾性波速度は,入力波の周波数帯域が10~50kHzにおいて周波数への依存が小さくなった.つまり,この周波数帯域では,速度分散あるいはNear-fieldの影響が小さいと考えられ,P・S波速度と一軸圧縮強さとの相関に収束傾向が認められた.また,S波速度の相関を既往の研究と比較すると,同一の一軸圧縮強さに対するS波速度に差があるものの,増加勾配は同等になった.その差の要因には,本実験での検討結果から計測条件の影響があると推察された.

土木計画学
論文
  • 白柳 洋俊, 寺川 佳奈子, 羽鳥 剛史
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00020
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     全国各地で進められる景観保全に関する政策的な議論において,ともすると外観の保全に過度に焦点が当たる場合がある.外観に偏重した保全は,その土地に根付かないばかりか,社会関係の維持やアイデンティティの構築に深く関わる行為を断ち切るとの結果を招き,地域固有の社会文化的な価値観の否定に繋がる恐れがある.本研究では,外観に偏重して景観を過度に単純化・一般化して保全しようとする信念を「景観保全に関わるシンプリフィケーション」と呼称し,景観が有する多面的な価値の学習機会の提供が当該意識の形成を予防する効果を持ち得るとの仮説を措定し,室内実験に基づき検証した.実験の結果,景観の多面的な機能に関する情報の検索・学習する機会を設けることで,景観保全のシンプリフィケーション意識の形成の予防に繋がることを示した.

  • 三村 泰広, 山岡 俊一
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00038
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     2021年8月,生活道路の新たな面的対策であるゾーン30プラスが打ち出された.ゾーン30プラスの整備に際しては,新たに道路管理者,交通管理者の連携の下で整備計画を策定することに加え,その策定に際して住民同意が図られることとされた.この住民同意の是非の規定要因を把握することは,今後のゾーン30プラスの導入推進において有益な知見となると考えた.本研究は,ゾーン30プラスの住民同意にかかる規定要因を整理することで,今後のゾーン30プラス推進のための基礎資料を提供する.愛知県豊田市の住民代表者(n=298)を対象に調査を実施した結果,市街地でのゾーン30プラス設定に際しての住民同意のしづらさは「対策意義伝達の難しさ」「通学路の少なさ」「大型車の通行困難さ」「速度遵守の困難さ」が影響することを示した.

  • 柴田 直弥, 大手 方如, 山崎 廣二, 西村 徹
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00060
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     国土交通省では,道路管理の効率化を図るため,2018年度よりモービルマッピングシステム(以下,MMSという.)による3次元点群データ等の収集・活用に取り組んでいる.本研究では,工事等で道路改変があった場合に,高価な地上型レーザースキャナー等のかわりにウェアラブルカメラやモバイル端末を用いて,簡易かつ迅速に点群データを取得する手法の検討を行った.その結果,当該手法により取得した点群データでも,MMSによる点群データと重ね合わせて利用できる精度を確保できることがわかった.また当該手法により取得した点群データを全国の直轄国道のMMSによる計測データを一括集約しているシステムへ登録が可能なように,「車両搭載センシング装置取得データ納品仕様」の改定案を作成した.

  • 田村 将太, 赤松 一澄, 片野 裕貴, 田中 貴宏, 松尾 薫, 横山 真
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00116
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,我が国では南海トラフ大地震による津波災害が予想されており,災害からの早期復興のために事前復興計画の必要性が指摘されている.このような事前復興計画作成の際には,災害の観点からだけでなく,生活や環境条件を考慮した空間計画が必要であり,そのためには住民の参加が重要である.そこで本研究では,津波災害が予想されている地区を対象に,事前復興の空間計画手法を提案することを最終目的とし,そのための第一歩として,南海トラフ地震による津波被害が予測されている和歌山県由良町神谷地区を対象に,1)住民参加,2)土地利用等の空間計画,3)防災以外(環境,生活等)の視点を考慮した事前復興の空間計画策定を目的とした住民ワークショップを行い,その実践を通して,本研究で提案する手法の課題と可能性を明らかにした.

  • 稲垣 和哉, 原 祐輔
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00191
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     集合知に基づいた学習,予測は公平,中立的で社会にとって望ましいものに見えるが,集合知を利用した意思決定は主体の選択に偏りを生じさせ,集合知を利用しない場合と比べて社会の状態が悪化する可能性がある.本稿では,このような状態を過学習型劣位均衡と定義し,数値計算を通して過学習型劣位均衡が起こり得ることを示すとともに,その発生条件と形成メカニズムを明らかにする.都市の各主体(個人,店舗,情報プラットフォーマー),集合知としてランキングを考慮したエージェントベースモデルを構築し,個人が異質な条件下では,1) 個人,店舗のランキングを利用した優先的選択が過学習型劣位均衡を引き起こすこと,2) 店舗のリスク回避志向が過学習型劣位均衡の形成をさらに強めることを示した.

  • 長崎 滉大, 瀬尾 亨
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00194
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     角度は物の方向を記述する量であり,土木計画・交通分野でもトリップの起終点間の方向や,各道路が向いている方向など,角度で記述される概念は多い.これらの方向分布から,全体の需要パターンや道路網の物理的形状と交通状態の関係を記述できる.しかし,角度が持つ周期性による取り扱いの難しさゆえに,角度による記述や意味解釈は積極的にされてこなかった.この周期性の克服のために,方向統計学という角度に特化した統計学が発展しており,他分野での応用・貢献がされてきた.本研究では,方向統計学の知見に基づき,交通状態を分析するための新たな方法を提案する.提案モデルでは需要と道路網の二つの方向分布から方向別の交通状態を回帰する.さらに,実際のデータを用いて提案したモデルの性質を評価,考察する.

報告
  • 大久保 達真, 森田 哲夫
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00233
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     農家と消費者をつなげるためのメディアとしての無人販売所の刺激の特徴を明らかにするために,農村の無人販売所と有人販売所を都市に出店し,購買者の反応を分析した.購買者に販売所の印象,訪問意向,つながりへの意向に関するアンケート調査を行った結果と料金箱のメッセージ分析を比較評価した.無人販売所は農家と消費者が思い・考え・気持ちをメッセージとしてやり取りする機能を含む刺激を備えることで,農家への興味を高め,農家にメッセージが伝わり面白いと思わせ,訪問意向やつながりへの意向を高めるメディアになりうることが分かった.一方この無人販売所の課題は,パネルが見られない,農家と思いや考えをやりとりしたい消費者層の割合は小さい,価値共創への関心が低い,などを改善するためのデザインであることが分かった.

土木技術とマネジメント
論文
  • 石田 仁, 矢吹 信喜, 大森 禎敏, 森屋 陽一, 藤田 真司
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00199
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     ICT土工では,施工機械の位置をGNSSで高精度に取得することにより施工機械の半自動的な運転が可能であるが,山岳トンネルのような地下空間では,GNSSを利用することができず,高精度な位置推定が難しい.また,一般的に狭隘な空間で多くの工種が入れ替わりながら施工を進めることから,施工機械や資材,作業員の配置を把握して綿密に調整を行う必要がある.本研究では,非GNSS環境下における位置推定手法として,LiDARを用いて標定点をリアルタイムにトラッキングする手法を提案し,インバート掘削時のバックホウの座標取得に適用することにより,インバート掘削の荒掘りを自動化した.また,自動施工の前後の工程や周辺の状況,関連作業をデジタルツイン上で俯瞰的に可視化することにより,安全な遠隔地からの自動施工の管理を実証した.

  • 稲場 亘, 松岡 弘大, 為広 重行, 福田 光芳, 貝戸 清之
    2025 年81 巻9 号 論文ID: 24-00301
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/20
    ジャーナル 認証あり

     鉄道設備の保守業務省力化は特に地方鉄道における重要な課題であるが,実態に即して検査体制を見直すには至っていない.本研究では,検査周期が短い転てつ機に着目し,主要な検査項目であるロックと密着の検査記録から混合ワイブルハザードモデルを推定し,要調整発生期間を定量化した.さらに,モデルから得た調整発生特性に関する形式知と,アンケートから得た現場技術者の暗黙知との整合性を調査した.その結果,調整がつぎの調整を誘発する調整発生特性が初期不良型の加速パラメータとして形式知化されることを明らかにした.また,異質性パラメータが大きい転てつ機16台のうち10台は,調整が多発するクセを有することが現場で認識されており,形式知の一部が現場技術者の暗黙知と整合することを確認した.

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