2016 年 72 巻 1 号 p. 19-31
ひび割れ補修された鉄筋コンクリート部材の繰返し荷重下における構造性能を明らかにするために実験を行った.ひび割れ補修時に鉄筋に作用している引張応力が異なると,応力の大きさに応じて除荷時の残留ひずみが大きくなる.ひび割れ幅が0.3~0.6mm程度となるような大きな引張力が作用している状態でエポキシ樹脂補修材を用いた場合には,ひび割れ部の鉄筋の付着力が回復する.セメント系補修材を用いても,鉄筋のひずみ挙動に与える影響は同等であった.補修後の鉄筋の残留ひずみに対して,荷重履歴における最大ひずみと補修時のひずみから推定する式を導いた.ひび割れ補修によって除荷時の残留応力が大きくなることで鉄筋に適度なプレストレス力が生じ,その結果繰返し荷重下では応力振幅が小さくなることで鉄筋の疲労寿命が増大することが示された.