2017 年 73 巻 1 号 p. 1-15
ASR劣化による外観と内部のひび割れ,および鉄筋損傷との関係性を求めるため,主鉄筋と帯鉄筋を配筋した複数のASR供試体を屋外暴露に供し,著しい劣化に進展した供試体を主な検討対象として,詳細な観察と分析を行った.その結果,外観ひび割れは,コンクリート表面に垂直かつ帯鉄筋深さで収束する特徴を有し,内部ひび割れは,鉄筋拘束の影響を受けた多様な方向性を持つ短いひび割れとして発生する傾向を示した.鉄筋が破断に至らない程度の劣化であれば,鉄筋拘束は有効に働いていると考えられたが,曲げ加工部で鉄筋破断が生じた場合には,破断箇所周辺において内部の深い位置まで連続するひび割れが発生し,外観上では段差や急激なひび割れ幅の増大が特徴的に生じる可能性を示した.