2018 年 74 巻 1 号 p. 1-9
塩化物イオンを含んだコンクリート模擬溶液中におけるSD345鋼の耐食性を検討するため,鋼材表面の不働態皮膜の電気化学特性をアノード分極測定およびインピーダンス測定により検討した.その結果,コンクリート模擬溶液への浸漬時間が長いほど不働態皮膜が安定になる一方,一定量以上の塩化物イオンが鋼材表面に到達する際には皮膜は破壊され腐食が生じることが明らかになった.さらに,乾湿繰返し試験中にインピーダンス測定を行うことで,乾燥および湿潤過程におけるコンクリート内部鉄筋の耐食性を検討した.不働態皮膜形成期間が長いほど乾湿繰返し時における分極抵抗の変化は小さくなり,鋼材は耐食性を維持できることが明らかとなった.さらに,乾湿の繰返しサイクルが短いほど生成する鉄さび中のmagnetiteの割合が増加することが明らかとなった.