本研究は,廃棄物処理の競争市場において,逆選択やモラルハザードを防止する,社会的に望ましい廃棄物処理を実現させる環境汚染賠償責任法を分析した.具体的には,汚染被害の不確実性を導入し,廃棄物排出企業である生産者と廃棄物処理業者の間の市場取引を割り当てゲームとして記述した.そして,過失責任,無過失責任,拡大排出者責任,罰金制度によって根拠づけられた複数の責任法のもとでの市場の社会厚生の比較を行った.この分析により,拡大責任や罰金制度の利点が示され,無過失責任や過失責任によって社会厚生が高められる条件が明らかにされた.