抄録
貝殻基質における水質浄化能の定量的評価のため、敦賀港内に9カ月設置した同基質を水槽内に静置し生物・化学的変化を追った。基質には植物プランクトンを捕捉する動物群を中心に計88種が固着・潜入しており、この水槽に珪藻を添加したところ、クロロフィルa量、懸濁物量ともに添加直後より急速な減少が見られ12時間後には両者ともにほぼ0になり、また、徐々に透明になっていく様子が確認できた。有機炭素量、有機態窒素量でも同様の傾向が見られた一方、硝酸態窒素は増加した。これらの除去速度を算出したところ、干潟に生息するヤマトシジミ、アサリなどと比較して1.7~17.2倍の効果があった。同基質は港湾内で立体的な構造を作ることが出来、設置面積当たりの環境浄化能力は平面的な干潟のそれを十分に補完できるものと確信する。