抄録
底質は長年にわたる沿岸開発や海砂利採取,汚濁付加の蓄積により悪化しており,これが水産資源や生態系に多大な影響を及ぼしている.そこで閉鎖性の強い港湾区域内において,約1,000m2の海底にカキ殻を厚さ0.5m敷設して,海域環境の改善と生態系の回復が行われるかを約1年間調査した.その結果,試験区では64~94種の底生生物が生息し,最大個体数,最大湿重量はそれぞれ3800個体/m2,1.14kg/m2で対照区のそれぞれ1.9倍,28.5倍となった.また試験区では,マナマコ,イイダコなど水産有用種も出現した.このことより,カキ殻を底質改良材として底質のシルト化や有機汚濁が進んだ港湾区域内に敷設することは有効であり,底質環境の改善に役立つと考えられた.