抄録
本研究では,沖縄県西表島網取湾における湾内流動場とサンゴ生育分布との関係性を明らかにするため,現地観測と数値解析により湾内における潮汐流と河川流との混合過程について調査した.2010年10月から約2ヶ月間,水温,塩分,照度に関する定点観測を実施し,特に夜間の静穏な引き潮時において,低温で低塩分の河川水が湾東部に選択的に流れ込み,網取湾の潮汐流と河川流の混合の際に生じる湾内流動場には明瞭な東西の非対称性が存在することが明らかとなった.更に,理想化された沿岸海洋モデルに基づく数値解析により,現地観測によって確認された湾内流動場の非対称性を精度良く再現できることを明らかにした.このような湾内流動場に見られる顕著な非対称性は,湾内の複雑地形の影響を受けたものと推測され,網取湾のサンゴ生育分布に見られる東西非対称性に大きく影響しているものと結論付けられた.