抄録
越波災害を誘発する低気圧の接近・通過時には護岸周辺に強大な風が吹き寄せるため,護岸越波量を算定する際に風の影響を考慮することは重要である.しかし,護岸設計に適用可能な知見は少なく,越波に及ぼす風の影響はほとんど考慮されていないのが現状である.本研究では,風に及ぼす越波流量への影響を把握する手段として,断面2次元数値波動水路CADMAS-SURFの自由表面に風応力を導入する方法を提案するとともに,風による水滴の運動が表現できるように既存のTimerDoor法を改良した.提案した計算手法の妥当性を水理模型実験との比較により検討した結果,風による砕波点の移動や護岸前面での平均水位の上昇,有風時の無次元越波流量を良好に計算できることを示した.以上より,提案した計算手法は風外力を考慮した護岸越波解析に適用可能であることを明らかにした.