2012 年 68 巻 2 号 p. I_132-I_137
津波被害が危惧される沿岸域には多数の海水浴場が点在している.しかし,既存の津波対策は,海水浴場周辺の地域住民を対象としており,観光客などの来訪者には対策が行き届いていない.防災対策の効果を最大限発揮させるためには,海水浴場利用者の属性や海水浴場利用者が抱いている防災意識などを正確に把握した上で対策を立案することが不可欠である.
そこで本研究では,津波防災意識に関するアンケート調査の結果より,共分散構造分析を用いて海水浴場利用者の避難意思決定に至る要因を明らかにしようとした.結果,避難意思の決定には防災知識を向上させるよりも,津波に対する不安を向上させることが有用であることがわかった.また,潜在変数間の因果係数を比較することで東日本大震災が避難意思決定に与えた影響を明らかにすることができた.