2013 年 69 巻 2 号 p. I_37-I_42
2010年東北地方太平洋沖地震津波では,和歌山県においても大津波警報が発令された.近い将来,南海トラフ沿いで発生の可能性がある巨大津波から人命を守るためには,今回の津波での避難行動を把握することは重要である.本研究では,アンケート形式によるヒヤリング調査を実施し,避難行動を把握すると共に,昭和南海地震津波の風化が懸念されるが,その経験が避難行動に活かされているのかを明らかにする.その結果,避難率は3割弱であり,主な避難者は大津波警報を基に,海岸から100m未満かつ浸水の可能性があった場所に居た人たちと推察される.また,強い揺れ=津波という教訓が,今回のような遠地津波では避難率を低下させる要因であったと言える.さらに,日頃の防災対策が大切であり,避難によって難を逃れた岩手県の事例を報告し,逃げるためのソフト対策の重要性を示唆する.