抄録
東北地方太平洋沖地震津波によって多くの防波堤が被災した.被災形態の一つとして,防波堤を越流する津波の打ち込みによる港内側マウンドの越流洗掘による被災が確認されている.本研究は,越流洗掘型で被災した防波堤と被災しなかった防波堤に着目して,被災のあり・なしの違いを生じる要因を水理模型実験により検討した.
越流洗掘により被災の生じた防波堤と被災の生じなかった防波堤の水理模型実験を実施した.越流水深により越流水の主流の打ち込み角度が変わり,防波堤マウンドへの作用点が変わることを示した.また,上部工構造の違いの影響も示した.港内側マウンドの被災に対して港内水位が重要であること,最も危険な水位が津波水位ピーク時であるとは限らないことを指摘した.そのため,港内側マウンドの越流洗掘対策を検討する際には,最も危険な水位および港内水位の変化の状況を見極めることが重要である.