2013 年 69 巻 2 号 p. I_413-I_418
津波避難ビル等の耐津波性能を向上させるため,建築物の管理者が設置可能な規模の津波対策工に着目し,対策工が建築物に及ぼす影響について数値計算により検討した.その結果,対策工によって建築物への津波の到達および最大津波力の発生を遅らせられることを示した.また,建築物前面での最大打上高と最大津波力は同時に発生するとは限らず,鉛直壁前面で局所的に発生する流速により非線形な波圧分布になる場合があることを明らかにした.さらに,建築物近傍に対策工を設置する際は高さを低くすることで,津波力の低減効果が期待できることを示した.ただし,対策工を建築物のごく近傍に設置した場合は衝撃波圧が作用することに留意する必要があることに言及した.以上から,建築物近傍に設置した対策工が津波力の減衰に有効であることを明らかにした.