抄録
日本海沿岸においてもこれまでに多くの津波災害が報告されている.本研究では,過去に日本海東縁部で発生し,能登半島に襲来した3つの歴史津波(1833年山形沖,1741年渡島大島, 1964年新潟沖,1983年日本海中部)を対象に非線形長波モデルに基づく数値解析を行ってその伝播特性を検討した.数値計算結果は痕跡高記録およびNOWPHAS波浪観測波形と良好に一致し,その有効性が確認された.4つの津波はいずれも能登半島北方に広がる浅瀬領域で屈折しエネルギー集中による波高増幅を伴って半島北岸に襲来する特性を示した.山形および新潟沖を波源とする場合は, 半島北岸中央部で最大波高を取る波高分布となり,より北方に波源が位置する場合には,半島北岸で多峰的な波高分布を示す結果となった.