2013 年 69 巻 2 号 p. I_497-I_502
国土交通省住宅局及び国土技術政策総合研究所により,津波流体力算定式における水深係数αに対し,津波入射方向に遮蔽物となる構造物が存在する場合,水深係数αを3.0から2.0へ低減できると提案している.しかし,水深係数2.0の適用範囲として,遮蔽物背後500m以内を一律に2.0とする是非について具体的に検討した研究は著者らの知る限り殆どないのが現状である.
そこで本研究では,粒子法の一種であるMPS法による数値シミュレーションに基づき遮蔽物背後に存在する建築物に作用する津波荷重の特性に関する検討を行い水深係数の値の適用性を明確にした.
その結果,防潮堤のような遮蔽物を津波が越流する場合,遮蔽物背後であっても水深係数αは2.0で実用上問題ないことを確認した.また,建築物の隣棟間隔が15m以内では前面建築物により背後にある建築物が受ける津波荷重が顕著に低減された.