2015 年 71 巻 2 号 p. I_957-I_962
八重山諸島周辺海域を分布北限とする熱帯性海草ウミショウブは環境省RDBに絶滅危惧II類として掲載されているが,本種の分布・群落状態および生育環境の定量的条件に関する情報は乏しい.そこで西表島北西部のウミショウブ分布範囲について当該海域の通常の高波浪条件を用いた外力分布再現計算を行い,この結果と,同海域のウミショウブ分布の調査結果とを直接比較し,ウミショウブの密生かつ草丈の長い群落は,D.L. -0.76mまでの水深で, 通常の冬季高波浪時の平均有義波高25~32cm,平均底面流速11~19cm/s,大潮時平均残差流速0.1~0.3cm/sを中心とする範囲に分布していることが明らかになった. この条件を物理環境の再現計算結果に当てはめると,おおむね現状の群落分布が再現され,ウミショウブの群落分布には物理条件が大きく影響することが明らかになった.