抄録
西表島網取湾におけるサンゴ分布調査と海洋大気河川観測および海洋波浪モデルを用いた数値計算により,塊状サンゴ分布と物理環境の関係を調べた.結論は以下の通りである.i. 塊状サンゴ被度と水深は反比例する.ii. 塊状サンゴ被度と他形態サンゴ被度は反比例する.iii. 塊状サンゴ被度と平均波高は弱い比例関係にある iv. 塊状サンゴ属数・被度と土粒子量はそれぞれ反比例・比例する.iiiについては,塊状サンゴはその形状と頑丈な骨格から波に強く,かつ両岸の平均波高差が小さいため,弱い比例関係となり,ivについては,少土粒子量の西側では多様なサンゴ属が生息可能であるが,多土粒子量の東側では粘液による土粒子除去能力に優れるハマサンゴ属が生残しやすいため,上記のような関係になったと考えられる.