抄録
本研究では,地殻変位データとABIC規準を用いて,従来の断層のすべり量とハイパーパラメタだけでなく,断層の走向および傾斜角の点推定を同時に行っている.AkaikeによるABICの値が,ハイパーパラメタと観測誤差ノルムの関数であることを利用して,ABICの最小値から断層の走向および傾斜角を推定する方法の精度について,数値シミュレーションにより検討している.その結果,誤差ノイズが5%程度であれば,走向および傾斜角の真値とABICが最小となる走向および傾斜角がほぼ一致しており,誤差ノイズが10%程度でも十分精度よく断層パラメタの推定を行えることが分かった.
さらに,1秒毎の地殻変位時系列データを用いて,東北地方太平洋沖地震を対象に準静的津波波源インバージョンを行った.その結果,地殻水平変位データの観測値と計算値の比較では,変位量に若干の誤差が見られたが,変位のパターンはよく再現されていた.また,津波波形の比較では,Central Iwateを除いて比較的良く一致していた.