抄録
第三世代波浪推算モデルであるWAMは設計波の算定,波浪予測情報の提供など実務に適用されているものの,海上工事が可能である低波浪時における予測精度の検証は少ないため,著者らはこれまでWAMを海上工事に適用するための検証を進めてきた.これらの検討を通じて,特に低波浪時において波高を過大評価,周期を過小評価するケースがあることを確認していた.
本研究では低波浪時の波浪推算精度を低下させる要因を現地観測との比較を通じ検討した.その結果,周波数スペクトルを用いた比較検証から,WAMにおいては高周波数成分のエネルギーを過大に評価する場合があることを確認した.全体エネルギーが小さい低波浪時においては,過大評価したエネルギーが相対的に大きく,結果的に波高の過大評価,周期の過小評価につながっていると考えられ,この高周波数成分のエネルギーの評価改善が低波浪時の予測精度向上につながると推察した.