2016 年 72 巻 2 号 p. I_724-I_729
矢板式岸壁の腐食孔からの埋立土砂の吸い出しを水理実験と数値解析の両面から検討した.その結果,岸壁前面の水位が最も低下する位相の前後に土砂の流出が生じること,埋立土砂の吸い出しは静水面に対する腐食孔の相対位置の影響を強く受けることが判明した.また,腐食孔が空気中に露出する条件では,引き波時に腐食孔内部の上側から流入し,下側から流出する流れが生じることを確認し,水理実験で確認された土砂の流出はこの沖向きの流れにより生じたことを示した.さらに,吸い出しは腐食孔の内部に生じる沖向き流速が大きいほど発生しやすく,そのときに地盤が膨張状態にあると陥没に到る大規模な吸い出しが発生する可能性があることが判明した.そのため,腐食孔が開いたとしても,その内部に生じる沖向き流速を小さく抑えることの重要性を示した.