抄録
本研究では泥質河口干潟を対象に堆積物のCO2吸収および排出速度を計測し,底質環境の変化との関係を明らかにすることを目的に調査を行った.底質環境について,粒度組成の経月変化は認められなかったが,Chl.a量,AVS,ORPには季節変化が認められ,それぞれ異なる時期に最大値を示した.堆積物におけるCO2吸収速度,CO2排出速度はそれぞれ0.0675~6.63 mg CO2/m2/min,0.0380~2.82 mg CO2/m2/minで変動した.両速度は地温と正の相関関係が認められ,夏季に最大値を示した.また,Chl.aあたりのCO2吸収速度は地温と正の相関関係があり,CO2吸収速度は底生微細藻類量より活性に依存していた.さらに,CO2排出速度は泥質域に優占的に生息しているヤマトシジミの存在が寄与していることが示唆された.