抄録
干潟保全の重要な因子とされる細粒分の動的特性解明の一環として,粘土の抜け出し現象に着目した水理模型実験を実施し,波浪条件と粘土含有率による混合土砂からの粘土の抜け出し挙動と,抜け出し現象が混合土砂の漂砂特性に与える影響を検討した.その結果,粘土の抜け出し速度は,粘土含有率と入射波の波高および周期に依存することが判明した.また,混合土砂の地形変化は,粘土の抜け出しが一定量に達してから発生する傾向があり,粘土の抜け出しが混合土砂の移動限界に影響を与えることが明らかとなった.粘土の抜け出し形態は,表層から抜け出す形態と地盤内流路を通じて生じる形態に分類でき,その境界はpf = 0.10 - 0.20の間に存在することが示唆された.以上より,細粒分が含まれている底質の安定性を評価する際に粘土の抜け出し現象を考慮する必要性が判明した.