抄録
港湾施設における鋼矢板では,集中腐食により干潮面直下付近に孔開きや肉厚減少が生じやすく,それがエプロンの沈下や陥没及び鋼矢板耐力の低下に結びつくため,腐食により劣化した部材の力学性能を回復することは喫緊の課題である.本研究では,孔開きや肉厚減少が生じた鋼部材に対し,ワンサイドボルトを用いた当て板補修を行った場合の,引張耐力の回復効果と接合方法の有効性の確認を目的として,実験と解析の両面から検討を行った.その結果,ワンサイドボルトで当て板を母材に取り付ける補修方法により,補修後の耐力と部材剛性は無補修の場合に比べて大きな改善効果を得ることができた.また,数値解析による検証では,当て板の肉厚を増した場合よりリブ補強を行う方が耐力の向上効果は大きいことを確認した.