抄録
本研究は,栽培漁業による漁業振興と港内泊地の有効利用のため,対象種をマナマコとし,北海道南部の漁港において中間育成に適した放流・生息基質の検討として実証試験を行ったものである.放流基質として貝殻礁,生息基質として材質・空隙等を変化させた5種類のユニットを設置し,稚ナマコの放流,約1年の生息環境調査を実施した.これによりマナマコ体長はバラツキが大きいが成長しており泊地内での地点間の差異は見られない.また,泊地内でも砂や陸域由来の落ち葉など堆積が多い地点は,生息個体数は他地点と比較して少ない.放流後1年後のユニットは,材料としてホタテ貝殻をメッシュパイプに入れたもので,この間隔が狭いユニットは生息個体数が多いという結果が得られた.これらの結果は漁港内でマナマコ中間育成を検討するにあたり,有用な基礎資料となると考える.