抄録
有明海は高潮の危険性が高い海域の一つであり,特に背後に低平地を有する湾奥部の沿岸では,今後の気候変動による台風の強大化に伴う高潮リスクの増大が懸念されている.過去に多くの高潮シミュレーションが実施されているものの,氾濫解析を行ううえでは,同時に発生することが想定される波高の影響の程度を明らかにすることが重要である.本研究では,有明海における高潮発生時の波浪予測を行うにあたり,境界条件として与える潮位が推算結果に与える影響の程度を明らかにすることを目的として,潮位条件を種々変化させて波浪推算を実施し,台風T1216が東に2度平行移動した海上風条件で発生しうる波高を明らかにするとともに,高潮による潮位変化が有明海湾奥部の波浪推算結果に及ぼす影響の程度を明らかにした.