抄録
本研究では,周期の長いうねり性波浪が来襲した台風1721号を対象に,3つの第三世代波浪推算モデル(WAVEWATCH III,SWAN,WAM)による推算を実施し,その推算特性を,沖合から沿岸域の波浪諸元の平面分布や時系列,方向スペクトルを用いて比較し,以下の結論を得た.(1)実務で使用する方向分割数は24や36で問題ないが,うねり性波浪を対象に海峡や回折域を有する海域の計算を行う場合は,72程度の検討も必要である.(2)沖合では,3モデルの有義波諸元の再現性は総じて良好であるが,観測値の方向スペクトル形状の再現性が良いモデルが有義波諸元の再現性が高い傾向にある.(3)風波が卓越する閉鎖海域では時空間解像度をダウンスケールした海上風を用いる方がよいが,波浪推算精度を向上させる必要条件ではない.(4)東京湾の海峡部の地形近似を200m以下としても波浪推算精度を向上させる効果は小さい.