抄録
四国霊場の歴史は古く,その源流は古代にまでさかのぼるとされる.各札所とそれらを結ぶ遍路みちの多くは,沿岸寄りに立地しており,津波をはじめ様々な自然災害に見舞われる可能性がある.特に,四国地方では近い将来に発生が予想される南海トラフ地震及びそれに付随する津波の対策が喫緊の課題となっている.こうした社会背景のもと,四国霊場八十八ヶ所や遍路みちの自然災害被災リスクを把握することは,伝統文化財の次世代への継承のみならず,地元の地域防災力の向上の面からも必要である.また,各札所を結ぶ遍路みちは,現在の幹線道路と重複する区間も多く,発災時の物流確保の面からも重要なインフラの一つと位置づけられる.このような社会背景を踏まえ,本研究では,アンケート調査結果や各種空間情報の分析によって,四国霊場八十八ヶ所及び遍路みちの自然災害被災リスクの検証をおこなった.