抄録
本研究は,大津波警報発表時に,海上にいる釣り客を迅速に避難させるための課題とその対策について検討することを目的とする.具体的には,小規模な海上浮体構造物である海上釣堀や釣り筏にいる釣り客(本研究では海上釣り客と呼ぶ)を遊漁船業者が地震発生後に母港から迎えに行き,母港まで戻った後,釣り客が一次避難場所に辿り着くまでの一連の避難行動を取り上げる.団体釣り客に模した調査員の記録とGPSデータ,南海トラフを震源とした津波想定を基に,問題点や代替案について検討した.その結果,避難時間の最小化や避難後の対応を考慮した「海上釣堀・釣り筏」→「上陸ポイント」→「避難路」→「一次避難場所」を一体的に考えた海上釣り客向けの避難ルート整備が必要であることを示した.