抄録
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際に,岩手県内では約400隻の漁船が沖出しし,このうち幾人かが津波の犠牲となり亡くなっている.津波常襲地域であり,全国と比較し相当数の小型船外機船で養殖漁業等を営む岩手県の田老町漁業協同組合をケーススタデイとして,水産庁の「災害に強い漁業地域づくりガイドライン」に沿って設定した避難海域と東日本大震災津波時の漁船避難実態分析などを行った.その結果,ガイドラインに記載されている「津波流速が平均船速の1/5以下の海域」でなくとも避難海域として設定しうる可能性が高いこと,小型船外機船への津波に関する情報伝達を迅速かつ正確に行うために沿岸海域の養殖漁場などで,夜間でも視認・聞き取りできる回転灯や防災無線スピーカーを岬の先端などに配置することが有効な手段であることが判明した.