2018 年 74 巻 2 号 p. I_85-I_90
氷海域におけるコンクリート構造物の劣化は,主に凍害,塩害そして海氷摩耗の複合劣化であると考えられる.海氷摩耗を伴う複合劣化の研究には,氷とコンクリートの摩耗試験が不可欠である.そして,摩耗特性を明確に把握するためにも長期間の摩耗試験が必要である.しかし,従来の気中における摩耗試験では,コンクリートの摩擦面に氷膜が形成され,摩耗の進行が抑制されてしまうことから,長期間の摩耗試験が困難であった.そこで筆者らは,氷膜の形成を抑制する水中摩耗試験法を開発した.不凍液中で摩耗試験を実施することにより,氷膜の形成が抑制され,長期間の摩耗試験が可能であることを確認した.また,気中,塩水中,不凍液中における氷とコンクリートの動摩擦係数に,ほとんど差がないことを確認した.