2018 年 74 巻 2 号 p. I_91-I_96
結氷海域においては, 鋼構造物表面に発生した錆層が冬期間に海氷作用により除去され, 裸鋼材面が露出する現象が毎冬繰り返される.この結果として腐食量が増加し劣化が促進される.しかし,この氷海域特有の現象が設計に反映されていないためにオホーツク海沿岸の導流堤の被害が想定よりも早く発生してきた.本研究では, この鋼構造物の劣化機構を滑り摩耗試験から把握して錆層の定常摩耗時の摩耗率を評価することにより, 経過年数に対し予測される損耗厚の簡易な算定法を提案した.これにより, 構造物の供用期間に応じた損耗厚が算定でき, 予め必要な鋼材厚として部材に付加することでコスト的に有利な犠牲鋼板としての合理的な損耗対策が可能になる.