2019 年 75 巻 2 号 p. I_989-I_994
本研究では大阪湾を対象にした長期計算が可能な水質・底質結合モデルを構築し,水質と底質の長期変動および相互の関係性について検討を行った.解析の結果,T-N・T-Pともに,1980年あたりで水質濃度のピークを迎え,その後水質濃度は減少傾向に転じるが,その際底質濃度に大きな変化は確認されず,1990年を過ぎてから底質濃度も明確な減少傾向を示した.この水質と底質で異なる変動特性は,水質は陸域からの栄養塩負荷量削減にすぐ応答し,早い段階で減少傾向に転じるが,底泥は蓄積した有機物の分解・溶出が蓄積量より大きくなるまでに時間が必要なため,改善に時間がかかると考えられる.近年,底泥中のT-N・T-P濃度が減少傾向であり,流入負荷量の持続的な規制による底質環境の改善が示唆される.